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今年のテーマは、義理チョコらしかった。 西方軍の元帥殿は、下界のイベントを曲解の上拡大実行するのが、それはそれはお好きで。 今年のテーマは、義理チョコ、らしかった。 「天蓬元帥ー、こちらにもハンコお願いしまーすっ!」 「ああはいはい、ご苦労さま」 たぶん、いや絶対今日中の決済が必要ではないはずの書類を一枚ずつ持った下士官達がずらり並ぶのは、 天蓬の執務室の前。 「ああはいはい押さないで。一列に並んで下さいね〜。あ、最後尾ここね、これ持って」 段ボールを切って、極太マジックで「ここは列の最後尾ではありません」だの「最後尾はこちら」なん て書かれた即席プラカードを渡すのは、永繕だ。 いったいどこの大手サークルで覚えてきたんだ、とつっこみたくなる列さばきである。 朝いち、天蓬の元に書状を届けに行った兵が、にっこり笑った天蓬に 「いつもご苦労さまです」 と渡されたのが、チ○ルチョコきなこもち。 机の上には、業務用45個入り大箱が、どかんと置かれている。 何だこりゃ、と。 とりあえず首を傾げたのは、チョコレートとしては不可解な味ゆえか、あるいはそもそもバレンタイン の習慣が一般化していな天界で何故天蓬がチョコレートを配っているのか、理解されなかったからか。 それでも午前中が終わる頃には、どうやら今日は天蓬の部屋に行くと元帥御自ら直々にチョコレートを 御下賜くださるらしい、という話は全軍に広まって、気が付けば廊下の端まで届くような大行列だ。 「んで、いったいどーいう風の吹き回し?」 「はい?」 結局、行列は、終業時間いっぱいまで途切れることはなかった。 トップ二人よりは善人で思いやりある西方軍の兵達は、さすがに天蓬元帥に時間外労働は申し訳ないと 思ってくれたらしい。 まだ机の上には幾つか残っている、栄養剤型チョコだの、カッパのすだれ巻きチョコだのを手に、捲簾 が問いかける。 「いや楽しそうだなぁ、と思って」 大好きなあの人に食べて貰うため、と。 とびきり美味しいチョコレートを探す乙女心には、残念ながら共感しかねるけれど。 アイデアだけを競った謎のチョコレートの群は、無視しきれない魅力に溢れていて。 「だからって、自分で食べる気にもならないですしねぇ」 基本的にあらゆることに無頓着なくせに、さりげなく美食家なのは、たぶん、周囲が甘やかすから。 だいたい、一人で食べきれる量でもないし。 そもそも、甘党、というわけでもないし。 「んで、俺には?」 「は?」 「……バレンタイン、だろ?」 新年行事は、ともかく。 七草がゆに、鏡開き。 バレンタインに、イースター。 エイプリルフール。 天界に、バレンタインの風習はなくても、毎年毎年天蓬に付き合わされて次から次へと年中行事をこな している捲簾ともなれば、さすがに2/14ぐらいは覚えるというものだ。 「そうですねぇ……どれがいいです?」 残ったチョコをごそごそと探して。 とりあえず、並べてみる。 たいして期待はしていなかったものの。 やっぱり義理チョコかい、と。 ちょっとだけ、うらびれてみる捲簾だ。 それから。 「あー……んじゃ、これでいいか」 ふと、思いついて。 手近にあった、小さなチョコを摘み上げる。 ぺり、と包み紙をめくって。 予告なく、天蓬の口へと押し込む。 「な……」 天蓬の驚いた顔に、に、と悪戯っ子の笑顔を見せて。 そのまま、深く口づけて。 絡めた舌の間で。 チョコレートがゆっくり溶けていく。 狙いは、たぶん、外れていないけれど。 「うわ、ホントにきなこだ。しかも本当に餅だし」 「ふっふっふ。でしょう?」 「しかも美味いし、ありえねー」 何故か得意そうな、天蓬と。 キスの先に進み損なって、少しだけがっくり肩を落とす捲簾と。 なにはともあれ。 甘い一日の、終わりだ。 '04.02.14 p.m.10:22 |
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