金蝉は、自分が『綺麗』だということを知らない。

 
 
 ***
  
   
  金蝉がそれを鼻にかけるような人間なら、そもそも天蓬は金蝉に意識を向けることさえなか
 ったとは思うけれど。
  それでも、時々、
 (もったいないなぁ………)
  と、思わずにはいられないことがある。
 


  肩のところで一度不規則にうねった後、まっすぐに落ちる金色の髪の、そのさらさらとして、
 柔らかくしなやかな手触りが、天蓬はとても好きだ。
  その持ち主の、不器用で融通の利かない性格とは似ていないようで。
  けれど、そのまっすぐきらきらとした輝きは、何よりも彼そのもので。
  
  言葉にすれば。
  すべて、真実味が薄れそうで。
  
   
 
  ぎゅ、と握りしめては、また緩める。
  掌から零れていくその髪の束を、また握りしめる。
  
  ただ。
  何も言わず。
  飽かず、繰り返す動作は、あくまで、丁寧で優しく、愛しげで。
  
  それは。
  天蓬にとって、確かにとても大切なひとときだた。
   

 ***
  
  
  髪にかかる僅かな負荷。
  痛い、という程強く引っ張られるわけではないけれど。
  ずっと、触れられているのは、ちりちりと神経に淡く触れられているようで落ち着かない。
  
  けれど。
  繰り返し己の髪を弄る存在の手を振り払うことは、決して金蝉には出来ないのだ。
  
  その、無心な動作を繰り返す時の天蓬の、柔らかく楽しげな表情を、知ってしまっているから。
  
 

  天蓬が、己の髪をどうやら気に入っているらしいことは、いくら鈍感な金蝉にも分かる。
  自分に無頓着な金蝉は、それが金蝉その人自体への好意であるとは思わないので、たとえ髪
 だけであろうと、天蓬が気に入っているならそれでいい、と思う。
  思う、けれど。
  時に。
  どうしようもなく複雑な気持ちになる。
  天蓬が、愛でている物、といえば。
  ケン○ッキーおじさんに、特大招き猫。それから、お風呂玩具のアヒル隊長に、親子ガエル
 の灰皿。
  つまり。
  彼曰く「アーティスティック」、他人から見れば、ただの怪しいガラクタで。
  自分もまたそれらと同等の存在なのだろう、と。 
  心中秘かに結論づけて、ひっそりとだが確実に、金蝉は凹みそうになる。
  
 
 ***
  
  
  はたから見れば。
  その個性色合いは全く違うとはいえ、いずれ劣らぬ美しき神族が二人。
  仲良く寄り添っているようにしか見えないことを、当人達は知らず。
 
  そして、お互い、あまりに噛み合わないことを考えていることもまた。
  知らぬが花、というものだろう。

  
 

 
'03.11.05  a.m.00:49

 
先月行われておりました金×天企画「恋しうすべに」の掲示板にて “金蝉の髪を弄る天蓬”という話題が出ておりまして。 ……もうその瞬間に、この構図(とゆーかネタ)が出来ておりました。 本当は企画参加作品として寄稿させていただきたかったのですが、 如何せんオフラインが忙しすぎて(泣) 企画は終了されましたが、せめてもの感謝の気持ちで、ここに書かせて戴きました。 アイデアを下さった蒼様と企画主催の成瀬様、お二方に 心から感謝を込めて捧げさせて戴きます。


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