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「悟空……?」
はしゃぎ疲れて。
眠りに落ちた子供を、二人して途方にくれた顔で見下ろした。
合計80kgの枷は、大の軍人である二人にしたって、充分すぎる程に重いのだ。
「悟空。起きて下さい、悟空。……帰りますよ?」
何度か肩を揺すって声を掛けてみるものの。
「ん………もうお腹いっぱい……」
ころんと寝返りをひとつ。
そんな寝言を呟いている悟空を相手に、例えば酔い潰れた部下達を叩き起こす時の要領で足蹴にして回る等という荒っぽい手段はさすがに取れない。
「…悟空?」
起こそうといまいち効果に欠ける努力を続けている天蓬の指が、ふと、悟空の掌をかすめれば。
ぎゅ、と悟空はその指を握りしめる。
驚く程強い力で握られた指は、解こうとしても解けない。
「……痛ッ」
握られた指の痛さに、天蓬は思わず顔を顰めた。
悟空の力は、それほどに強い。
それほどに、強くて────幼い。
「赤子なんですね、悟空」
触れる指を握りしめる、その無心の仕草は。
「仕方ねぇか」
よっこいしょ、と。
若干爺むさいかけ声と共に、捲簾は悟空を持ち上げると背中に負った。
「……大丈夫ですか?」
心配、というよりは。
疑わしげな表情で、天蓬が問う。
「………なんとか」
平気、とも言い難いが。
運べない、こともない、と。
捲簾は、苦笑する。
何より、酔いつぶれた野郎を担ぐのに比べれば、断然、精神的に苦痛じゃない。
「明日、腰痛になっても知りませんよ」
「その時はマッサージよろしく」
「何で僕が」
「じゃ、コレ、置いていくか?」
コレ、呼ばわりされた悟空と。
悟空の手に今だしっかりと握りしめられたままの己の指先を、等分に見比べて、天蓬は小さく溜め息をついた。
たとえ、少しくらい痛くても。
指の骨の一本や二本折れたとしても。
きっと、この優しく、あたたかな気持ちは、決して損なわれたりしない。
その手に触れたものを、握りしめる。
それは、無意識の、というよりは無条件の仕草であり、人が人に示す、一番最初の愛情表現なのだ。
慈しみを呼び覚ます、一番最初の、仕草。
それを。
愛しい、と。
心の底から思うから。
「行くぞ」
ゆっくりと、捲簾が歩き出す。
落とさないように。
起こさないように。
そっと。
優しく。
ぎゅっと握りしめた悟空の掌から、生まれてくるのものは。
きっと。
伝えられていく、想いだ───.
’02.06.19 a.m.02:10
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