手塚国光、という名前は。
実のところ、ずいぶん前から知っていた。
名前も。
顔容姿も。
そして、何より彼のテニスの腕を。
ただし。
直接、彼と試合したことだけは、未だになかったけれど。
それはとても近くに在るのに。
手の、届かない存在。
そうやって。
ちゃんと、相見えることもできないまま、誰かの存在を意識し続ける、というのは。
片恋に、似ている。
彼が、腕を故障した、という噂が聞こえてきたのは、もうずいぶん前のことだ。
───冗談じゃねぇ、と。
何故か。無性に。
腹が、立った。
(もっとも、跡部景吾という人間が、いっそ不条理なほどに他人に腹を立てているのは
いつものことで。
それにも増して無闇に他人に腹を立てさせるのが、彼の特技であるけれど。)
そして、その噂を裏付けるように。
二年生、夏。
Jr選抜の合宿に、手塚の姿はなかった。
一方的に。
恨みにも似た感情を、憶えた。
絶対。
許さない。
あの、綺麗なものを。
不用意に壊すなんて。
そう、思った。
そんな、怒りに似た感情の向く先は、やはり手塚国光本人でしかなく。
尖って。
時に凶暴で。
残酷で。
行き着くところなんて、知らない、執着の始まりだった───。
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