「手塚よぉ、どうした?」
挑発する言葉に。
普段なら、予想外の方向から冷ややかに返される返答もなく。
あまり顕著に表情を変えることのない彼が、それでも眉を寄せ、口元を引き締め、何かを耐える顔をしている。
何か───途切れることなく与えられ続ける、ゆるくやわらかな快感という責め苦を。
「もう限界だろ?」
それは、問いかけではなく、断定。
言い返す言葉の代わりに。
鋭く、決して怯むことを知らない瞳が、強く跡部を見つめ返す。
眼鏡という硝子の鎧を武装解除されてなお、誰よりも勁い、難攻不落の瞳が。
跡部の利き手が、手塚の肌を這う。
触れられることに弱い箇所を、的確に攻めてくる。
彼の。
跡部景吾の、強さの一つは、そのインサイト──眼力──にあると言われる。
相手のどんな弱点をも、見抜いてしまう力だ。
こんな風に追いつめられてしまうのは。
その、インサイト故だ、と。
掠れがちな意識の中で、手塚は強く思う。
「我慢しないで、さっさとギブアップしちまいな」
含み笑い、と。
意地の悪い科白。
自らの絶対優位を確信して揺るぎない跡部らしい科白だ。
けれど。
だからこそ、そこでギブアップなんて絶対にできないのが、手塚らしさであり。
跡部の前に、なすすべもなく崩れ落ちるくらいなら、と。
せめてもの意地で、噛みつくような口づけを一つ、仕掛けた。
一方的に、攻められてなんかやらない。
堕ちゆく快楽なら、二人。
道連れのように。
不意の。
甘い反撃に。
跡部は、一瞬、跡部は目を瞠り。
それから、喉を撫でられた猫のように、ひどく満足げな笑みを浮かべて、愛しげに目の前の「敵」を見つめる。
「俺の忠告、聞いといた方がお利口だぜ」
共に、と彼が望むなら。
容易く、満たしてなんてやらない。
泣いても。
懇願しても。
絶対。
聞いてなんて、やれない、から。
まるで。
それこそが、望みだ、と言うように。
熱を帯びた手塚のまなざしが、跡部を、捉えた。
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