「うん、この試合は見ものだよ」
見たいのは。
見ないでなんていられないのは。
きっと。
自分だけじゃない。
「……さあて、どっちが強いのかな」
他人に本心を読ませない千石スマイルを保ったまま、呟く。
去年。
千石は、手塚に負けている。
跡部の強さは、Jr.選抜の強化合宿で、体験済み。
どっちも、自分より強い。
それは、分かっている。
でも、どっちが強いか、読みきれるほど。
二人とも、自分相手に、本気の全力を見せてはくれてない。
それも、分かってる。
だから。
どっちが強いのか、なんて。
分からない。
「千石さん、さすが手塚ですね。ただ左右に打ち分けているだけじゃない。すべてコーナーギリギリ、
外に逃げてく打球です」
それまで黙って見ていた室町が、思わずと言ったようにそう声を上げる。
「うん!」
それに、力強く同意をして。
「でもその揺さ振りをものともせず打ち込める、氷帝の跡部くんも凄いと思うよ」
もっと、力強く。
千石は、そう言い切れば。
「千石さん、嬉しそうですね」
そう。
見破られた。
「そう?」
さらり。
室町の言葉を受け流す。
もちろん。
嬉しいけど。
(だって。あの、跡部が。
めちゃくちゃ楽しそうに、試合しているのだから)
残念ながら、嬉しいだけ、なんかじゃない。
何で。
今、そこで君と対峙しているのは、俺じゃないんだろう?
「嬉しそうってより、のろけだろうが」
今度のつっこみは、南から。
「う」
そ、それは。
認めざるをえない、かも。
悔しいけど。
だって。
俺の好きになった人は。
俺の、好きな人は。
こんなにも、凄い人なんだよ、って。
こんなにも、かっこいい人なんだよ、って。
声を大にして。
言いたいよね。
言って。
いいよね?
|