・Lady, Steady, Go・ 驚くなら、どうせならもっと普通に驚いてくれると分かりやすいんだが。 ロイ・マスタングの最も近しい部下の一人であるジャン・ハボック少尉は、彼をよく理解するがゆえの感想を抱いていた。 「………ふむ、本物だな」 錬金術師としての独特の思考ゆえか、あるいは軍人として厳しく感情を律してきたゆえか。驚く、ということがあまりないロイは、驚いた時の反応が、少しばかり常人とは異なる。 混乱を示すわけでもなく。むろん怯えたりするはずもなく。 ただ。 強烈な好奇心に駆られ、周りのことが一切見えなくなる、だけだ。
感覚もある、温度もある、と。 ロイは、己の胸を、検証している。 そう。 撫でる、とか揉む、とか。 乳房を目的語として続くべき動詞なら、幾らだってあるだろうに。 彼の、それは、検証でしか、なく。 何となく、ハボックをうら哀しい気分にさせた。 |