・Vitamin Color・ 「体温」ハボロイ+ヒューズ 長い両脚を、少しばかり行儀悪くでんと投げ出してソファに座った、その脚の間。 ちょこん、と入り込んで、浅く座る。 ハボックのちょっとやそっとじゃびくともしない硬い胸板を背凭れの代わりに、体重を預けて、後は新聞を読んだり、本を読んだり。 まるで気侭に過ごすのが、ロイのくつろぎのひととき。 心ここにあらず、といった風情のその身体が、ソファからずり落ちてしまわないように、片腕を腰に回して、シートベルトよろしく固定して。 後はハボックも、新聞を読んだり、雑誌を斜読みしたり、ぼおっと煙草をふかしたりして過ごす。 どうということはない、日常のひととき。 けれど。 自分の、この腕の中こそが。 彼にとっての定位置だ、と。 迷いなく信じていたのは。 蜃気楼みたいな、幻だった。 どうしようもなく思い知らされた、その瞬間。 「結局、あんたは誰でもいいんですね」 優しく抱き締めてくれる体温があれば。 「俺じゃなくたって」 他 「Vitamin Color」 「軍の猫・番外編 〜Grooming」 「Candy Color」 「My Life as a Sleeping Dog」 の短編5本収録。 このページと同じく目に眩しい黄色の表紙が目印の本です。 |