静誕


2 取り立て組





「そういや、今日、誕生日だべ?」
 言いだしっぺは、トムだった。
「っす」
 静雄が小さく頷く。
 お、照れてる、とトムはこっそり笑う。
「じゃ、帰りにケーキでも食ってくか?なぁ、ヴァローナの嬢ちゃんも」
「誕生日にケーキを食す日本の習慣、歓迎します」
 分かりにくい言葉と表情で、けれどケーキという言葉に対してヴァローナの反応はとても良い。
「おお、決まりだな」
 静雄の甘い物好きは知っていたけれど、二人だけだったらケーキを食べに行こうとは誘わなかったかもしれない。
 色々あるけれど、ヴァローナが加わってよかったなぁ、とトムは思った。


 数時間後、某有名食べ放題チェーン店で、部下二人の胃袋に消えていく圧倒的なスイーツの量に、見ているだけで気分が悪くなりそうで、トムが少しだけ後悔したのは、幸せそうな今日の主役には内緒だ。