静誕


4・臨也 




「……くせぇ」
 自室のドアの前で立ち止まって、静雄は唸った。
 どこであろうと近くにいれば、静雄だけが感知できる、その存在。
 あやうく捻りつぶしそうになった自室のドアノブは、少し歪んだのか回す時に軋んだ。

 暗い室内。
 狭い玄関には、他人の靴が一足。
 邪魔だ、とだけ思う。
 ひっそりとした夜の底には、畳に転がって静かに寝息をたてるノミ蟲が一匹。

 
Sub;
Happy Birthday
本文;
君にプレゼントをあげよう

 夕刻受け取った差出人不明、見たこともないメールアドレスからの、不審メールを思い出す。
 プレゼントにしては、始末が悪すぎる。
 けれど。
 誕生日プレゼントだというのなら、粗末に扱うわけにもいかねぇだろう畜生、と溜め息一つ。

 落ちている「プレゼント」を静雄は、無造作に拾い上げた。