麝香 臭い、と言われる。 心外だ。 まあ、心外なのはその台詞に限らず、彼の存在そのものだけれど。 それにしたって失礼極まりない。目覚めをよくするためもあって、朝シャンは学生の頃からの習慣だし、彼に追われている時以外で汗をかくほど暑苦しい生活はしていない。 なのに、あの男は、臭い、という。 「俺、臭い?」 あんな人外のいうことをまともにとるのも遺憾だがさすがに一度、闇医者に尋ねてみたことがある。すると新羅は遠慮なく笑った。 「きっと君のそれは指向性が強すぎるんだよ。ジャコウジカ君」 「俺がシズちゃんにフェロモンを発しているとでも?」 臨也の表情が目に見えて険しくなる。 「採取させてくれるなら特別に検査してあげてもいいけど。静雄は協力してくれないよね。君に香嚢があるとは思えないから、より興味深いのはあっちの嗅覚の方だしね」 「頼まれてもごめんだね」 「そう。残念」 さして残念でもなさそうに新羅が言う。 「ああでも臨也、僕が君の匂いを感じとれないとしてもそれは当然だから、俺を基準にするんじゃないよ。私はセルティ以外の如何なる誘因にも興味ないからね」 「覚えておこう」 無駄な時間を使った、と嘆息一つ。あの男がどんな人外の感覚器官を持っていようが知ったことではないが、香嚢だなんてとんでもない。折原臨也は間違いなく人間だ。 まして。 あの男だけを誘っているなど、まっぴらだ。 |
2011/3/8は においいざやの日 とtwitterで見かけたので書いてみました 臨也さんを匂いで分かるシズちゃん、というのはとてもエロいと 初めてこの二人を見た時から思い続けてます 素敵な公式設定万歳 |