11.11.11




 
 ぽき、と軽い音が昼休みの屋上に小さく鳴った。
「ポッキー?」
 臨也が口に咥えている細い棒状の菓子を見て、小首を傾げて、新羅が問う。
 行動と言動の変さが目立ってほとんど注目されていないが、実は可愛らしい顔立ちをしている新羅なので、そういう可愛らしい仕草にもまるで違和感がないということを臨也も知っているが、特にそのことについての感慨はない。
「君甘いものそんなに好きじゃないよね」
「好きじゃないけど」
 かさりとビニールの内袋を指でかき分けて、また一本引き抜いて、チョコレートのついてない部分を形のよい、綺麗な薄紅色の唇に触れたところで止めて。
「ゲーム、するかい?」
 およそ折原臨也らしくない、まったく乗り気のない声で誘いかける。
「いいけど」
 臨也が咥えると同時に、反対側をかりと音を立てて新羅が齧り取る。
 かり、と臨也も食べ進める。
 互いが一口齧り取る度に、不安定に動く細い菓子を、互いに危なげもなく緊張もなく、齧り進めて。
「……」
 掠める、というよりは確実に接触する唇の表面。
 口と口の間で、最後のポッキーのひとかけが折れる。
 その状況になんの感情の動きも見せない新羅へのせめてもの嫌がらせのように最後のポッキーを攫った臨也の舌先が新羅の唇に触れた。


 べきっ、と鈍い音が昼休みの屋上に重く響いた。
 静雄の手の下で、コンクリートの壁が砕けた音だった。
 賑やかな教室に居づらくて、たまたま踊り場で行き会った門田と共に屋上に出てきた静雄が目にしたのは、まさに臨也と新羅の文字通り口の間でポッキーの最後のかけらが消えた瞬間だった。
「おい」
「気分、悪ぃ」
 くるりと背を向けて、静雄は来た道を戻っていく。
「……」
 溜め息一つ、門田は臨也と新羅の方へと顔を向ける。
「やぁ、門田君」
「ドタチンもポッキー食べる?」
 次のポッキーを咥えて、臨也が誘う。
「物を口にいれて喋るな」
 臨也の誘いを、明らかにそうと分かる形で無視して、門田は臨也が手に持ったままのポッキーの箱から新しいポッキーを一本取って口に入れた。


 唇が触れても何も感じない程度にしか関心がないくせに、変につきあいのよい新羅も。
 諸方面へのいやがらせが空回りして自爆している臨也も。
 そして、いつものように暴れ出さなかった、静雄も。
 門田にとっては、厄介な、友人達だ。





 





昨年の11/11ポッキーの日にすべりこみでピクシブにあげたSS

新羅と臨也の二人が、一緒にいる来神時代が大好きです
あくまで新セルでシズイザで!