バン!
と一発。
乾いた銃声が、響く。
「……大佐?どうかなさいましたか」
問いかける声は、一見穏やかで。
「……い、いや」
たらり、こめかみを一筋の汗が伝わる。
たとえ、尻尾と耳が驚愕のあまりぴーんと立ったまま、
硬直していても。
たとえ、尻尾と耳の普段は滑らかなその黒い毛並みが、
総立ちになってしまっていたとしても。
ぎこちなくも、何事もなかった顔を装って。
後には、ただ、かりかりとペンを走らせる音と。
まだ少しばかり、収まらない、心臓の鼓動。
どんなに猫耳と尻尾が愛らしくても。
時と場合に応じて、やはり中尉は容赦ない。
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