「大佐」
もう少し近づいて。
もう少し大きな声で呼びかけてみれば。
「…ああ、何だ?」
やっと、振り返ってくれる。
「あー……今から武器庫の点検が入ってるんで、
よろしければご同行願えましたら、と」
武器庫の点検に行くのは、事実だけれど。
本当は必要なのは、この人のサインだけ。
点検に、大佐自ら足を運ぶ必要など、
もちろん本当はどこにもないのだけれど。
「うむ、そうか」
一見、事務的に頷いて。
ロイは、窓辺を離れる。
けれど。
その後ろでは。
わくわく、言いたげに揺れる尻尾。
そう。
こんな天気の日は。
少しくらい、一緒に、外を散歩したって、
罰は当たるまい。
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