・餌をあげる・



「何だ?」

足音に気付くと共に、指が口元から離れる。
もったいないような、ちょっとほっとするような。

ついさっきまで彼自身の指先が触れていた唇に
今すぐくちづけてしまいたい衝動を、
ぐっと我慢して。やり過ごして。


隠し持っていた小さなキャンディを一つ。
その口元に押し込んだ。
混ざりもののない、それは猫化した彼に許された
数少ない甘い嗜好品。


従順に口を小さく開いて
彼は押し込まれるキャンディを受け入れる。



……ああ、もう。

彼はいつだって、
無自覚に煽情的だ。





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