「大佐?」
声をかけたくらいじゃ、容易に起きる気配はなく。
その、無防備な寝顔に、
ささやかな悪戯を思いつく。
腰のホルスターから拳銃を抜いて。
かちゃり、わざと音を響かせてセーフティを外せば。
「……っ、中尉!その、これはだな…」
がばっと跳ね起きると同時に言い訳を始める。
予想以上の反応に、たまらず噴き出せば
ようやくそこにいるのがホークアイでないことに気付いたロイが
憤然と見上げてくる。
こんこん、と。
またノックの音。
「失礼いたします、大佐」
今度こそ、本当の中尉の登場に。
まったく減ってない未処理の書類の山にちらり目を向けたロイは
あからさまに引きつった笑いを浮かべて。
「……いや、ハボック少尉が至急の相談があるというのでね」
「……」
頷け、と。
目線で強要する。
頷いてしまえば。
共犯者扱い、一緒に叱られることになるのは間違いないのだけれど。
「……少尉?」
無表情に、視線を向けられて。
「は、はあ……」
頷いてしまったのは、自分でもどうしようもない、と思う。
叱られるのも、一蓮托生。
だけど。それも。
悪くないな、と思いながら。
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