・ひとつ屋根の下・
R-18
A5/44P/2007冬コミ発行
表紙&ゲストに 水剣芹哉様@RR25
通称 きらきらしいえろ本 (笑)
おそろしく寝起きの悪い次男ロイは、まだベッドで枕と仲良くしていた。白いシーツに、散らばる漆黒の髪。パジャマの襟から覗く項がなんとも艶かしい、なんてことはたぶん本人は知らない。 そうして、抱き枕をぎゅうっと抱きしめて寝ている姿はとても年上の男とは思えなかった。 「ロイ。もう起きないと遅刻っスよ」 「んー」 一見反応があったように見えるが、そこで安心してはいけないことを、ジャンは身にしみて知っている。 「ウィンリィの朝飯が冷めちまいますよ」 「……ん、すまない、…ウィンリィ」 ほら、やっぱり、と溜息をつく。 これは寝たまま返事をするという彼の特異な条件反射だ。 休日ならこのまま寝かせておいてもよいのだが、あいにく今日は水曜日で、彼は一限目から講義が入っていることをジャンは知っている。 しょうがない、と最終手段を用いる決断をする。これをやると目覚めの悪い彼が百発百中飛び起きる最終兵器だ。難点は、自分に、少なからずダメージの残ること。 背に腹は変えられない。 「……ロイ」 ぐいと身を屈めて、吐息の触れる近さから、耳に直接注ぎ込むように、低く名を囁く。 「ん……」 むずかるように、ロイが声を漏らす。 あと一押し、とさらに顔を近づけて、その唇に触れる、一瞬前。 ぱちり、とロイが目を開いた。 相変わらずこの人の、危険回避本能は凄まじいものがある、とジャンはその姿勢のまま、暢気に感嘆する。 「………っ!」 無言で絶叫するロイに、ジャンはにっこり笑って。 「おはよう、ロイ兄さん」 そう、しれっと朝の挨拶を口にした。 「……タバコ臭い」 ベッドに浅く腰かけて、ロイは大袈裟に顔を顰める。 今のところホーエンハイム家唯一の喫煙者であるために、彼が煙草を吸うのは専ら自室と限られているせいで、余計彼の部屋には煙草の匂いが染み付いている。 「悪い」 全然悪いと思っていない様子でジャンはそういうと、ロイの隣にどさりと腰を落とす。 「……っ」 一瞬、ロイの身が緊張するものの、次の瞬間彼は大きく腕を広げてジャンを抱きしめた。 「………こんなに大きくなりやがって」 ロイの腕に余るほどの、身体。 小さな頃には、ロイの腕にすっぽりとおさまっていたというのに。 「そりゃあ、……あんたを抱きしめるために、大きくなったんスから」 いつでも。どんな時でも。 自分を抱きしめて守って何よりの安らぎを与えてくれるその人を、守られるのではなく守りたいと思ったのは、やっぱりまだ小さかった頃だと記憶している。 あの頃から、ずっと。 「……ずっと、こうしたかった」 ことんと甘えるように肩に預けられた彼の頭の重みを愛しく重いながら、伸ばした腕で逆に彼を抱きしめる。 寄せ合う体温に、伝わるぬくもり。 「ロイ」 名前を呼んで。 大事に、キスをする。 家族のそれではなくて、恋人同士のキス。 唇を重ねて。舌を絡めて。深く入り込み、侵し、受け止めるキスを。 |
冬コミ、芹さんに委託して貰えることになって
そしたら「ひとつ屋根の下記念に合同ペーパーでも作りましょうか?」
と提案していただいたところ
うっかりひとつ屋根の下ハボロイが妄想されてしまったので
ペーパーからうちの新刊に格上げされました
もちろん家主様を巻き込んで。