Tangent

・02・

 ───出逢いは、最悪だった。

 その黄金の髪と、紫紺の瞳を初めて目にしてから、約三十秒後。
 そいつは、俺の腹に、思いっきり膝蹴りを喰らわせやがった。
(もちろん、きっちり、殴り返しはした)

 それでも。
 その最初の三十秒に、分かったことは随分沢山あった。
 
 例えば。
 そいつが、ちょいとそこらではお目にかかれないくらい、綺麗な顔をしていること、とか。
 不機嫌なツラと。一々、腹の立つ言葉。
 やけに様になってる法衣とS&Wの組み合わせ。
 その挙げ句、「因果応報」ときたもんだ。
 ……気に入った。
 
『本当はやっぱり、地獄に堕ちることを望んでいたんです』
 あいつが、そう言ったから。
 ああ、こいつ死ぬんだな。
 そう、思った。
『勝手に死なれちゃ迷惑なんだよ』
 そいつが、そう言った時。
 死なせたくない。
 そう、気付かされた。
 
 ……気付かせてもらった、ともいう。
 俺的には認めたくないけど。
 
『何を期待している?』
 何も。
 望んでなんかいない。
 ずっと、そう思って生きてきた。
 
 もう、ずっと昔。
 たった一つだけ望んだのは、その人の笑顔。
... やわらかに波打つ髪。細く儚げな後ろ姿。
 ほんの少しでいいから。
 振り向いて。
 笑って、欲しかった。
  
 何も持たない自分の、たったそれだけの望みが、永久に絶たれたあの日から。
 何も望まない。
 何も期待しない。
 そんな風に生きてきた。
 気付かせたのが、三蔵だった───。
 彼を、死なせたくない、という身勝手な想いにも。
 彼を必要とするほどに、救われたい自分にも。
 
 だから。
 
 今度は、自分の意志で。
 望んでみようか?
 
 もっと。
 そいつを
 見ていたい、と。
 
 ……だって、さ。
 その方が、ずっと、面白そうじゃん?


    

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