「そなたの探す師の形見、聖天経文が使われている可能性があります」
三仏神の言葉に。
胸の底に、押し隠してきた傷が開く。
今という時間が、いっきにあの朝に繋がる。
失われた経文。
だから。
別に今に始まった話じゃないのだ。
雨とか。
朱泳とか。
関係ない。
ただ。
自分が、どの程度みっともなさを晒さずにいられるか。
それだけだ。
───ダセえ真似をした。
ただ、それだけを考えた。
それが、他の全てから、目を逸らすことだったとしても。
「お揃いの傷なんて僕は御免ですから」
そんな勝手極まりない台詞で、心配と制止を同時に投げ込めるのが八戒という男なら。
「一人で出ていきたいなら、そっちの窓からどうぞ」
そう、言ってのけるのが、悟浄という男だった。
真紅の瞳と、翡翠の瞳。
正反対の色だからこそ、互いの美しさを引き立てるのだとは、大切な人の、大切な教えで。
それは、どこか、彼らにも当てはまる気がしていた。
いつから、彼らは、こんなにも当たり前に、自分の目の前にいるのだろう。
いつから、自分は、こんなにも当たり前に、彼らが目の前にいることを受け入れているのだろう。
バカ猿じゃあるまいし。
三年前の出逢いなら、それこそ、一言一句覚えているけれど。
そんな覚えていると言うこと自体が、実はおそろしく特異なことだ、と。
そおうと分からない位にはやっぱりバカではない自分が、──気付いてしまう自分が、時に疎ましい
と思う。
ふん。
くだらねえ。
そうして。
切り捨てた。
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