「そーいや、お前んとこは、何作ったんだ?」
跡部が、千石に聞き返したのは、ずいぶん遅れたタイミングだった。
跡部は、絶対、いわゆる会話上手な人間ではない、けれど。
決して、話すのが嫌いな人間でもなかった。
たとえ千石相手、でも。
それなりにおしゃべりはしてくれる。
態度と口が悪すぎて、そう気付くまでには時間がかかったけれど。
「少なくとも、マフラーじゃねーんだろ?」
そう訊かれて。
「パジャマ」
短く、千石は答えて。
口にした瞬間、自分で気付いて。
はっとしたような顔をして。
少し慌てたように、付け足す。
「あげようか?」
手作り、パジャマ。
これなら、そうそう器用な女の子でも、そうはくれないだろう、と思う。
なんてナイスアイディア。
思いついた自分は、やっぱりラッキーだ。
そう思う。
自分なら、それはちょっと貰いたくない、なんていうのは、立派に棚の上に放り出しておいて。
「絶対いらねぇ」
跡部の返事は、当然そっけない。
「そう?可愛いくできたのに」
断れれたら、俄然着せてみたくなった。
自分で着る気はまったくなかったけれど、修学旅行のパジャマは全員手作りのそれ着用と
決まっていたので、 いちおう着て恥ずかしくない色と柄は選んだ。
自分に似合う、白地に、深いグリーンのチェック。
跡部のイメージの色でないところが、少し残念だけれど。
「ああ、やっぱりあげるのやめた」
「?」
突然の前言撤回に、何企んでいやがる、と跡部は不審顔。
「信頼ないなぁ」
「あるわけねーだろ。てめぇの胸に手をあてて考えてみろ」
「えー、俺、何かしたっけ?」
聞き返したのは、本気。
こんなに、跡部のことを考えているのに。
何で。
彼は、それを素直に受け取らないのだろう?
パジャマはあげない。
あげない、けれど。
今度、うちに来た時には、絶対着替えに貸してあげよう。
そう、勝手に決めて。
勝手に、楽しくなった。
自分の部屋で。
自分の作ったパジャマを着てる跡部、なんて。
自分の物っぽくて、とても心惹かれる。
「……おい」
「何?」
「何企んでやがる?」
跡部が、睨んでくる。
彼の、そういうきついまなざしは、とても好きなものの一つで。
やっぱり、楽しくなるしかない。
できれば。
跡部も、同じくらい楽しくなれればいいのだけれど。
そう、思いながら。
横に立つ人の顔を、そっと伺った。
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