「ああ、やっぱり降り出してしまいましたね」
窓際にたたずんでいた八戒が、感情の見えない静かな口調で呟く。
さっきから聞こえて遠雷が、不意に頭上で轟き始めたかと思うと、ぽつんぽつんと大粒の雨が降り始め、
瞬く間に湖一つまるごとぶちまけたんじゃないかと思うほどの、大雨となった。
こんなにも厚い雲に覆われているというのに。
まだ陽の落ちきらない世界は、曖昧に明るく、薄暗く。
夕闇の空を切り裂いて、淡く紫の色を帯びた稲妻が閃く。
その光が強ければ強いほど、一瞬後に訪れる静けさは、深い闇と見紛う。
雨の夜は、苦手。
そんなこと、もう、とっくに、ばれているけれど。
こんな雷雨の夕暮れは、実は嫌いじゃないかも知れない。
ふと、そんなことを思った。
紫の閃光に、その人の面影が重なる。
人も物も。
この大地の全てを、分け隔てなく、威圧し、凌駕し、照らし出し、そして闇へと消えていく。
太古。
混沌より天地を分かつ雷の中から、この大地の生命が生み出されたように。
生と死に一番近いところにありながら毅然と生に立つ、その人に与えられた、この命。
「八戒?そんなとこで何してんの?」
とても綺麗な。
光を。
見ていました。
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