Tangent

・17・

 
 いつだったか。
 八戒が言った。

「うそですよね。あの人が短気だなんて」
「は?」

 八戒の話、というのはたいがい唐突で。
 俺は、たいてい、間抜けな顔で聞き返す羽目になるもんだった。

「三蔵です」
「……斬新な意見だな」
 あの暴力たれ目の、どこが短気じゃないって?
 あいつに三八口径、撃ち込まれそうになった回数を思わず数え上げそうになる。
 俺としちゃあ至極常識的な判断を返したつもりだったが。

「だって。十年ですよ?あの人が、光明三蔵様の形見を追って。あの型破りな人が、 
あんな大寺院に暮らして。とても気の長い、忍耐強いことですよね?」
 八戒の言いたいことは、分かった気がした。
 同意するかどうかは、また、別の話としても。
 
 十年、か。
 比べるつもりなんて、まるでなかったが。
 頭の隅っこで、無意識に年を数えていた。

 ……たぶん。
 十四年。
 それぐらい。

 だから、どうかって言われれば。
 長くもなければ、短くもない。
 ま、俺はどっかの生臭ボーズと違って、気は長え方だしよ? 

     

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